一年365枚NEO 2017

アクセスカウンタ

zoom RSS メンデルスゾーン 交響曲第3番《スコットランド》/ クレンペラー フィルハーモニア管弦楽団

<<   作成日時 : 2006/03/02 01:13   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 1 / コメント 3

強面のクレンペラーが、この曲は本当に慈しむように演奏しています。

クレンペラーという指揮者は、ちょっと普通の“クラシック音楽のマニュアル”とは違った“規範”を持って演奏をしていたものと思われてなりません。
ゆっくりとした“動かざること山の如し”のようなテンポ、いかに音楽というか音符をあるがままに鳴らすかということに腐心するのみで、それ以外に、きれいに演奏しようとか、音楽を盛り上げようとかいう意志が、あまり感じられない。たとえてみれば、大自然の風景、壮大な建造物。
そのかわり、ひとたび、曲と彼のその個性がマッチすると怪物的な大名演になったりするというのが、この指揮者の特徴ととらえていました。
彼のマタイなどは、その一曲目の合唱の最初の一音を聴いた時点で、このクレンペラーの特徴が聴き取れ、それと同時にその音楽にどっぷりはまる、もしくは呪縛されてしまいます。永久に終わらないようなイエスの十字架を背負っての行進。なんたる巨大な音楽の巨大な演奏でしょう。

評論家の許光俊氏が、その著書《世界最高のクラシック》の中で、クレンペラーのつくる音楽の『物語性』のなさと、曲への『感情移入』を拒否したような『距離感』を指摘していますが、それを読んだ時に、まさに、我が意を得たりと思いました。

しかし、この《スコットランド》に限っては、なにかちょっとかってが違うようです。
最初から『おやっ』と思います。ゆっくりとしたテンポ、深い呼吸で始まるのは一緒でも、何か、上述したクレンペラーの音楽に対して思っている私のイメージと違う雰囲気があります。“あの”クレンペラーが、悲しい旋律をもつけれど、この上なく優雅なこの1楽章の序奏を“思い入れ”をこめて演奏しているようなのです。でも、その思い入れが、上品で、大人(たいじん)の音楽でもあるのです(これはもっともクレンペラーのもともとの音楽的特徴ですが。)。
主部に入っても、テンポはゆったり、しかし、よどみなく流れ、美しさは格別です。
クラリネットの寂しげな音色、10分あたりから動いている管楽器群の、また、ヴァイオリンとチェロの絡み合いといったら・・とその聴き所をあげていったら枚挙に暇がありません。

2楽章、明るい音楽ですが、クレンペラー、泰然自若としています。1楽章に比べあっけらかんとしているともいえます。ちょっと息抜きどきかもしれません。
1分半過ぎの木管楽器の動きを聴いているとフィルハーモニアというオーケストラも本当に名人の多いオーケストラだったんだなと思い到ったりします。

3楽章は、本当に素敵なアダージョです。こんこんと湧く泉から小さな流れができ、そこからゆっくりとした流れがどこまでも続いていくような音楽で、クレンペラーの深い呼吸が本当に音楽に合っていると思います。

3楽章が終わって4楽章にアタッカ(休みなし)で入っていくところ、とってもカッコ良いんです。カッコ良いクレンペラーとはなんたることでしょう。堕落でしょうか?違います。愛です。この曲、クレンペラーにとっては、特別の一曲だったような気がしてなりません。プレヴィンの“ラフマニノフの第2交響曲”にもそういうところがありましたが、クレンペラーは、この曲だけは、我が子のように愛情を込めて育てた(演奏した)のだと思うのです。

その証左というのでしょうか?
愛ゆえに許される暴挙というのでしょうか?
クレンペラーには、メンデルスゾーンの原曲に筆を入れ、第4楽章のエンディングを短調のまま終わらせてしまったバイエルン放送交響楽団とのライブ録音も残っているのです。

話を演奏の方に戻しましょう。
この4楽章もメンデルスゾーンの短調系アレグロ(正確にはアレグロ・ヴィヴァチッシモ)の名品ですが、節度もあり、推進力もあり(クレンペラーに推進力?)、絶妙な演奏です。弦もこのテンポがゆえに、アレグロにもかかわらず本当に美しく響きます。
エンディングは、確かに、もともと唐突に明るくなるので、違和感を覚えることが多いのですが、クレンペラーは、ここをゆっくりと大きな足取りですすめ、交響曲としてのけじめをつけているように思えます。

とにかく、美しくて優雅だけれど、中身もある充実した音楽を聴きたいと思ったときにこのCDに手がのびます。

EMI TOCE-59009


通常、普通のエンディングの方の上述の盤を聴くことが多いですが、バイエルン放送交響楽団盤も、たまに取り出します。
こちらの方は、若干マニア向けかもしれませんが、演奏の傷はさておき感動の大きさでは甲乙つけがたいですし、くだんのエンディングはそれなりに説得力あります。(これを聴きなれると、オリジナルのコーダが取ってつけたように聴こえるようになってしまうという弊害はあるので要注意ですが。)

EMI 7243 5 66868 2 3


(参考図書)
世界最高のクラシック 許光俊著 光文社新書  

人気blogランキングへ

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
「メンデルスゾーン 交響曲第3番《スコットランド》/ クレンペラー フィルハーモニア管弦楽団」...
丘さん、今晩は。 ...続きを見る
一年365枚
2006/03/03 23:37

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
こんにちは。クレンペラーの「スコットランド」は変わっていますね。マーク等の演奏に耳慣れてしまった私には、まだしっくりしません。「感情移入の拒否」そのものに聞こえてしまいます。
もっともっと聴いて、この記事のようなすばらしさを納得できるまでになりたく思います。

2006/03/03 13:44

全く同感であります
以前はカラヤンを聴いていたのですが、美しいとは思いながらも、呑みながら聴いた時に感じる、如何ともし難い物足りなさに何と無く欲求不満を覚えていました。
そんな時に出会ったクレンペラー盤。
最早言うべき事は何もありはしません、大満足です。
ひろ
2010/08/18 09:18
ひろさん、コメントありがとうございます。
《スコットランド》、そんなにたくさん聴いているわけではないのですが、表面的な親しみやすさに反し、なかなか満足できる演奏が、クレンペラー以外なかなかないなあと思っています。
久々にクレンペラーの《スコットランド》を聴いてみようかな。
garjyu
2010/08/18 22:28

コメントする help

ニックネーム
本 文
メンデルスゾーン 交響曲第3番《スコットランド》/ クレンペラー フィルハーモニア管弦楽団 一年365枚NEO 2017/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる