ブラームス クラリネット五重奏曲 / マイヤー(cl) アルバン・ベルク弦楽四重奏団

ブラームスの全作品の中で、私の一番好きな曲です。
そして、このアルバム、マイヤーのクラリネットの優しい響きとアルバン・ベルク弦楽四重奏団との洗練された音の溶け合いが美しくも素晴らしい、一期一会のライブ録音です。

ブラームスのクラリネット五重奏曲(以下“クラ五”)、モーツアルトのそれと並んで、クラリネットを含んだ室内楽曲の中では白眉と言えるでしょう。
モーツアルトの達観した透明な美しさとは対照的に、ブラームスのそれは、より人間的な、悲しげな独白のような音楽だと思います。「どちらかを取れ」と言われると、「ううん。」と迷いながらも「ブラームスのこちらの方が、今の私の心には染み入るなあ。」と答えるのかな(まだ、ちょっと迷いがあります。)。

ところで、私、“弦楽四重奏曲”のアルバムについては、ほとんどアルバン・ベルク四重奏団(以下“ABQ”)のものしか書いてないくらい、この団体好きなんです。
それ以前から、このブラームスのクラ五は好きだったので、このアルバム、ABQ目当てで、新譜で出たときにすかさず購入しました。そして、この演奏に完全に打ちのめされました。

ザビーネ・マイヤーについては、購入時はほとんど意識していなかったんですが(というか彼女の演奏、それまで、聴いたことなかったと思います。)、彼女のクラリネットのニュアンス豊かで、センスが良く、その音の“キュンと胸を締め付けられるよう”に美しいこと(もちろんABQの4人のバランスの取れた美しさも聞き物なのは言うまでもありません。)。カラヤンが、男性しか入団出来ないことになっていたベルリン・フィルに“横紙破り”をしてまで、彼女を主席クラリネット奏者に招いたこと、この演奏を聴いて得心しました。


第1楽章、最初の弦の出だしからABQの音の美しいこと。そして、身震いするほど悲しげだけれど美しく素敵なクラリネットのメロディが入ってきます。
1分ちょっとすぎからの“ザザーン”という最初の盛りあがり、ここ好きなところの一つなんですが、本当に鳥肌たちます。
そして、クラリネットと弦の溶け合いの見事なこと。また、これは曲の良さでもあるんですが、どの声部も独立して動いているようで、全部が有機的につながっている素晴らしさ、どこにも無駄な音がない・・それをこの演奏がどの楽器も突出することなく証明してくれています。
この曲の中でも一番好きな楽章です。

第2楽章、ブラームスらしい優しい子守唄のような、たゆたうようなアダージョ楽章。クラリネットの後ろで動く弦に耳を傾けましょう。それ以降も、主メロディーと見事な裏旋律との動きの美しいこと。
3分前くらいからクラリネットが1楽章の回想のようなメロディを吹き始め、少し音楽がざわつきはじめます。ブラームスの独白=クラリネットの嘆きに心打たれます。

第3楽章、Andanntino のこれもまた、優しいブラームスの音楽。
後半がスケルツォっぽい Presto non assai。スピード感の中に、ときとして、哀愁を感じさせる音楽です。クラリネットの合いの手のタイミングの決まっているのがすっきりと決まっています。うまい!

第4楽章、冒頭は、第1楽章に匹敵する悲しくも美しい始まります。1分過ぎから始まるチェロの旋律、聴いていたら涙が出てきました。
2分過ぎの激しい嵐のような音楽。それがだんだんと形を変え、長調に短調に揺れ動いていくのですが、ベートーヴェンに匹敵する変奏曲の大家ブラームス、最後まで緊張感途切れることなく音楽は紡がれて行きます。もちろん演奏の良さあってのものです。
最後のコーダの寂しくも美しいこと。

緊張と、優しさと、歌と、嘆きと、全部が詰まった音楽と演奏。
最後の拍手までが、本当に、暖かさを感じます。
ちまたでは、あまり話題にならないようですが、私的には強力推薦盤です。

ちなみに併録の弦楽五重奏曲第2番も大好きな曲、演奏も素晴らしいです。ただ、もったいないので、こちら曲については、また別の機会に書かせていただきます。


ブラームス クラリネット五重奏曲 / マイヤー(cl)アルバン・ベルク弦楽四重奏団@HMV

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